新郎にとっては生まれ育ったまち
新婦にとっては地域研究でまちぐるみでお世話になったまち
数多のご縁が繋がって結ばれたお2人の式は地域に根付いた神社で行われました
2人にとってルーツとなる大好きなまちで、
地域の皆様に感謝を伝え、門出を見届けてもらう結婚式
たくさんの方々の力添えがあって実現することとなりました
そのはじまりは家族に見守られてのお支度から
新婦にとっては第二の故郷といえるまちで、敢えて新郎新婦は別の場所でお支度を進めます
澄みきった5月の朝日が昇るに連れて、髪が結われ、着付けが進み、花嫁の姿が整っていく
「これから私は、このまちに嫁ぎます」
言葉にしなくても、空気感で伝わる
家族の時間を過ごしお支度を整えた新婦が向かう先は、このまちで新婦が一番にお世話になったご夫妻のもと
第二の実家といえるこの場所で、玄関ではなく縁側から家を出る「出立ちの儀」を行います
お相手の家に嫁いで戻らないという覚悟を表す慣習に倣って
現代でそこまで大きな覚悟は必要ない
けれどそういった儀式が行われてきた経緯を知ってそれに倣うことで、心持ちはより研ぎ澄まされます
実はこの神社で神前式が行われるのは初めてのこと
市内の大きな神社から宮司さんをお呼びして、備品をお借りしてゼロから創りあげます
まちの方々は何日も前から神社を掃除してくださり、
木々や山道の砂利を整えて式でのお供え物もご用意いただきました
前日も当日も設営中からたくさんの方からお声掛けいただいて
この場所で神前式を執り行うことに想いを馳せながら、あと数cmの位置調整をしながら設営を進めます
住み慣れたうちが、まちが、いつもとは違う色を帯びていく
日常の中の非日常に心が高鳴る
準備のために僕自身も何度も現地に足を運び、まちの人達と交流させていただいてお世話になりながら多くの方々ご協力をいただいて迎えられた当日
田んぼの間を凛然と練り歩く花嫁行列に、ただただ感動でした
新郎も新婦も、たくさんの感謝を伝えたいこの町の人達に
晴れの姿を見てもらいたくて、まちの掲示板に知らせを貼る
たくさんの人に来てもらえたら…
でもあくまでお知らせで正式な招待ではないからもしかしたらあまり来てもらえないかもしれない
そんな想いを抱えながら迎えた結婚式
門の外には道に収まらない程の皆様が駆けつけてくれました
家から神社までの約300m、20人程の親族でスタートした花嫁行列はその道を進むに連れて列は長く伸びていき
ついには神社の敷地の端から端まで届くほどに
現代では、花嫁行列=参進も神社の境内で行われることがほとんど、
この地域でも聞くところによると60年ぶりに行われた花嫁行列だとのこと
式の日は田植えの時期がちょうど過ぎる頃
田植えをしないまま残しておいてもらった一画で、式後撮影を行います
最高に自分達らしい家族写真を撮る
写真家の浅田さんの遊び心に触発されて、晴れ着で田植え機に乗っちゃおう、田んぼの中に入っちゃっおうと、
この日この家族にしかできないものにしようとこだわり抜いた家族写真は何度見返しても笑顔になれます
撮影後はお父様が晴れ着のまま田植えを済ませてくださいました
お祝い事と田んぼ仕事と、行事の後にすぐ仕事に取り掛かることまで含めていつも通りの家のことで、全部が繋がっていて家族らしい姿なのだそう
そうして植えられた縁起良いお米は稲刈りの後、
翌日に開催する披露宴のゲストへも引出物として贈られます
婚礼の日から時間が空いたとしても、お2人が贈るからこそ意味がある
たくさんの大切の人たちの力が集まって開催に至ったこの日の婚礼
家族を想い、地域を想う
故きを温ねて新しきを知る、素晴らしきハレノヒでした